toggle
全国憲法研究会は、約400名の会員を擁する憲法学研究者の学会です。
2020-10-15

2020年度 研究集会

毎年、春と秋(5月、10月)の年2回、年間テーマを立てた研究集会を開催しております。

これまでの研究集会テーマ 一覧

➢ 2020年度

年間テーマ:「分断・周縁・憲法学」

 憲法学はこれまで、自由、平等、民主主義を理念に掲げる社会の実現のため、他者への寛容を基調としつつ、個人の自由や多様性を尊重する社会システムの構築を一定程度目指してきたといってよい。また、コスモポリタニズムやグローリズム等を志向する、あるいはそれを前提とすることで、広く共有可能な価値の実現とともに、「拓かれた」良き未来が必然的に訪れる、という期待を漠然と抱いてきたのではないかと考える。こうした理論的営みや、憲法学に携わる人々がある程度共有してきた思いの重要性は、今後も変わることはないであろうし、そう信じたいところである。

 もっとも、我々の前に横たわる現実社会は、上記の理念・理想から幾分外れてきてはいないだろうか。特に近年の現象として、目を向けなければならないのは、市民社会の瓦解の徴候である。様々な局面を通じて人々の間で「分断」が進み、容赦のない怒りが分断化された人々の間で日々増幅され、他者への寛容、あるいは連帯が受け入れがたい理想になりつつあることは否めない。かような進展をたどる背景としては、たとえば、国内階層間の分断化、政治における疎外、社会関係の断片化、都市と周縁地域との間での対立等を指摘することができる。

 社会の分断や周縁化される人々を単なる一過的な事象とは捉えず、今日そこに到った構造的問題に焦点を当てたいというのが、上程案の総論的なテーマである。もっとも、現在の分断化状況の出現は、都市の知的エリートに支持されてきた「個人の自由」や「社会の多様性」といった価値自体への反感・反発を含み、さらにはそれを主張する、いわゆる「シャンパン・リベラル」とか「リムジン・リベラル」として恵まれた状況にある人々への反感・反発をも含むような、(場所的及び階層的)「周縁」となる人々の声が、傾聴に値しないものと顧みられなかったことが遠因にあると考えられる。  他方で、憲法学の担い手の多くは、都市で教育を受けた知的エリートそのものであると捉えられたとしても、仕方のない面はありうる。そうであれば、今回のテーマについて思惟することには困難が伴い、一定の自己省察を迫るものになりかねないことは、確認しておかねばならないであろう。しかし、困難を超えて、あえて現代の「分断」や「周縁」をめぐる問題に向き合い、新たな道筋を、憲法学自身において見出せないかと考えたものである。

春季研究総会
テーマ:「分断・周縁・憲法学」

2020年度の春季研究集会は、松山大学を会場として5月9日(土)に開催する方向で準備を進めて参りましたが、新型コロナウイルス感染拡大により、やむなく中止といたしました。

秋季研究総会
テーマ:「分断・周縁・憲法学」

日時:2020年10月17日(土) 13:30~17:00
会場:オンライン開催(参加方法の詳細は会員宛てにメールにて告知)

報告者・報告タイトル(敬称略)

・榎澤 幸広 (名古屋学院大学)「『周縁』としての『離島』からみる憲法問題」
・永山 茂樹 (東海大学)「世代の分断と憲法的統合」
・小谷 順子 (静岡大学)「社会の分極化とヘイトスピーチ」
・成原 慧 (九州大学)「情報通信技術による接続/分断と民主主義」
・木下 和朗 (岡山大学)「ブレグジットとイギリス憲法の動態:分断する政治・社会と統治機構のメカニズム」

司会:新井 誠(広島大学)、西山 千絵(琉球大学)
企画実行委員:新井 誠(広島大学)、西山 千絵(琉球大学)
       木下 和朗(岡山大学)、柴田 憲司(中央大学)

特別研究会「コロナと憲法」

【企画趣旨】

 新型コロナウイルス感染症のパンデミック、およびそれへの国家や社会の対応は、憲法の人権・民主主義・平和の基本原理の意義があらためて問われる重大な状況を日々生じさせています。

 こうした状況を仮に「コロナと憲法」問題と呼ぶとすれば、この問題についての学問的な検討は、「憲法を研究する専門家の集団であって、平和・民主・人権を基本原理とする日本国憲法を護る立場に立って、学問的研究活動を行」うと規約第1条で定める本研究会として、総力を結集して取り組むべきものと考え、以下の要領で特別研究会を企画しました。

日時:2020年10月18日(日)13:30 ~17:00
会場:オンライン開催(参加方法の詳細は会員宛てにメールにて告知)

報告者・報告タイトル(敬称略)

・小澤 隆一(東京慈恵会医科大学)「総論──企画趣旨説明もかねて」
・建石 真公子 (法政大学)「新型コロナウイルスと立憲主義──生命権・健康権保護と公益」
・山本 龍彦 (慶應義塾大学)「新型コロナウイルス感染症対策とプライバシー──日本版接触確認アプリから考える」
・米村 滋人(東京大学・ゲスト)「科学的判断と社会的意思決定──『行動変容』を求めたのは誰か」

司会:木下 智史(関西大学)、杉山 有沙(帝京大学)
特別研究プロジェクト・ワーキンググループ:
小澤 隆一(東京慈恵会医科大学)、木下 智史(関西大学)、只野 雅人(一橋大学)、 巻 美矢紀(上智大学)、毛利 透(京都大学)、 山元 一(慶應義塾大学)

関連記事