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全国憲法研究会は、約400名の会員を擁する憲法学研究者の学会です。

代表挨拶

駒村 圭吾

(慶應義塾大学教授)(2021年10月代表就任)


 全国憲法研究会は1965年4月25日、芦部信喜・阿部照哉・有倉遼吉・小林直樹・小林孝輔・長谷川正安・和田英夫ら25人の憲法学者が世話人となり、全国55大学に属する112人の憲法研究者を会員として創設されました。
前年の7月、内閣の憲法調査会が最終報告書を提出し、戦後初めて明文改憲の動きが本格化したことに対する、ある種の危機感が背後にあったと聞いております。


 本会の規約(1971年5月制定)の第1条には次のようにあります。
「本会は、憲法を研究する専門家の集団であって、平和・民主・人権を基本原理とする日本国憲法を護る立場に立って、学問的研究を行ない、あわせて会員相互の協力を促進することを目的とする。」


 憲法に定められた基本原理を擁護し、その実現を図ることは、並大抵のことではありません。自由や平等、平和や人権を希求する人類の歩みは基本原理についてのおおよその共通理解をもたらしましたが、それは、輝かしい勝利の戦績に飾られているだけではなく、おびただしい血の犠牲の上に成り立ってもいます。そのような壮大な苦闘の歴史の集積として憲法の基本原理は存立しています。しかし、それは決して自己完結したものではなく、基本原理が公共的価値である以上、多くの異見からの挑戦に対して開かれたものでなければなりません。このことは原理の安定性は常に動揺をきたす運命にあるとともに、その安定性を回復するための努力と工夫を常に求められることを意味します。

 このような動態の中で憲法を擁護するためには、私たち憲法研究者が、上記の目的にあるように、信頼に足る「専門家の集団」でなければなりません。それには、日ごろからの弛まぬ研鑚が求められます。研鑚は孤独な闘いですが、他方で、同僚や仲間、そして対峙すべき他者を必要とします。全国憲法研究会は「専門家の集団」にふさわしい、学知に対する畏敬の念の共有と、さわやかな談論風発の気風を旨としたいと思います。

 全国憲法研究会はそのような場を提供するために、長年にわたり努力を重ねてまいりました。春と秋の研究集会、憲法記念日講演会、特別企画の実施、学会紀要『憲法問題』の発刊、等々の活動を地道に展開し、現在、約400名の会員を擁する、憲法学単体では日本最大級の学会に育ちました。

 今後とも、先学たちの築いた学問の蓄積を大切にしつつも、それを批判的に継承し、社会との対話を通して学知に生命を与えるような活動を心掛けたいと思います。