2024年度春季研究集会のご案内
2023年10月9日及び12月9日に開催された第1回、第2回運営委員会にて、年間統一テーマを「性の多様性と憲法学」とし、下記の通り春季研究集会を開催することが決定しました。詳細につきましては、次号の会報にてご案内いたします。
(1)開催日時
2024年5月18日(土)
(2)会場
上智大学 四谷キャンパス
(3)テーマと企画趣旨
年間統一テーマ:性の多様性と憲法学
【企画趣旨】
性的な多様性をめぐる法制度が、ここ20年で世界的に大きな展開を見せている。同性婚は世界30か国以上で認められるようになった。これに対して、日本では同性婚や同性パートナーシップ法なども整備されておらず、性的マイノリティの権利の実現については依然として消極的な状況にあると言わざるを得ない。
しかしながら、近年、同性婚訴訟が各地の裁判所で提起され、2021年3月に札幌地裁で違憲判決が出されたのに続き、2022年6月に大阪地裁で合憲判決(ただし将来的に違憲となる可能性に言及)、同年11月に東京地裁で「違憲状態」判決、2023年5月に名古屋地裁で違憲判決、同年6月に福岡地裁で「違憲状態」判決が出された。またパートナーシップ証明制度も、今や250以上の自治体で実現し、同性パートナーシップや同性婚に関する日本での立法化を念頭においた民法学者ら(大村敦志代表)の共同研究の成果も公表され始めた。さらに経産省のトランスジェンダー(生物学的性別は男性、心理的性別は女性)の原告が、性自認に基づく女性用トイレの使用を制限されたことを争った裁判でも、最高裁第三小法廷がこの制限を違法とする判決を出した。このような中で、LGBT/SOGIをめぐる法については、一つの法分野として形成されたと言ってよく、憲法学からも当該分野へ総合的なアプローチが求められている。
また伝統的なリプロダクションの権利についても、再度、検討の余地がある。2022年に は、アメリカ合衆国連邦最高裁判所で、人工妊娠中絶をめぐり Roe v. Wade 判決が覆され た。日本では、旧優生保護法の下で、精神疾患や障害を理由に 1万6000 件に上る強制不妊手術が実施されたことが明らかになり、現在、裁判でも争われている。旧優性保護法自体をめぐる問題は、まさに憲法学にとっての「致命的な死角」(棟居快行)であり、憲法学界として検討しなければならない歴史的課題である。生殖補助医療の進展も憲法学からは見逃すことができないであろう。
加えて、性産業に対する法的問題については、従来、憲法学からは十分に焦点が当てられ なかったが、近年、アダルトビデオ出演被害防止法が成立し、またコロナ給付金について、性風俗業が対象外とさたことについて裁判が提起されるなど、新たな展開がみられるとこ ろである。 以上のように、性をめぐる諸問題は、憲法学において喫緊に取り組むべき課題であると考えられる。