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全国憲法研究会は、約400名の会員を擁する憲法学研究者の学会です。
2022-05-13

2022年度 研究集会

全国憲法研究会では、毎年春(5月)と秋(10月)の年2回、年間テーマを立てた研究集会を開催しております。

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➢ 2022年度

年間テーマ:経済システム・経済的自由と憲法 

 現代国家において、経済的自由権は、「国家による自由」実現のために一定の制約に服するものと位置付けられ、法律による広範な規制の対象となってきた。日本でも、「二重の基準論」に代表される違憲審査の基準や判断枠組により、国家すなわち一国の政治部門の規制権限を広く認める方向が定着している。
 日本国憲法のもとで経済的自由権への制約の合憲性については、薬事法判決(1975年)や森林法判決(1987年)といった代表的判例が存在し、そこで確立された法理は、こんにちまで、経済的自由権またはその行使の結果としての経済活動について憲法学または憲法規範の側から分析する際の立脚点であり続けている。しかし、21世紀に入って平等原則や精神的自由権についての判例がダイナミックな動きを見せたのとは対照的に、経済的自由権についての判例は膠着状態であり、むしろ単純な総合衡量論へと「後退」している感すらある。
 これに対し現実の経済社会は、上記2判例が生まれた昭和の時代からは目覚ましい変化を遂げてきた。国内の「護送船団方式」と呼ばれた官庁主導の経済政策は平成不況の中で立ちいかなくなり、国内産業も否応なくグローバル化にさらされるようになった。人やモノの流動化を加速させるグローバル化の進展や GAFAに代表される国境をまたぐ巨大企業の登場は、経済規制の対象や態様の見直しを迫っている。そして、グローバルな競争の中で、(もちろん当時においてもかなりの程度幻想であったが)「一億総中流」が言われた、いわば国の経済政策が機能していた時代も過ぎ、「格差社会」の現実が否定できなくなっている。だが同時に、現代においては環境と両立する経済活動の追求を掲げる SDGsのような国際的政策目標が、経済活動に具体的な影響を与え始めている。一方で、新型感染症の世界規模の広がりは、グローバル化した経済の脆弱さをも知らしめることになった。このような経済システムが置かれた状況の変化の中で、経済的自由、とくに職業の自由についても新たな視点からの考察が求められているのではないか。
 他方、現在のコロナ禍における経済活動への制約は、空前の規模で飲食業などの自由な営業活動を規制するものであり、その合憲性が当然問題となる。国民の生命と健康を守るためという典型的な消極的目的のための規制といえるが、世界的な規模での感染症の拡大という状況の中で、はたして従来の法理でどこまで対応可能なのかが試されているといえる。また、コロナだけでなく、近年の大規模災害の頻発は、安全を理由とした土地利用や人の移動の規制の必要性と問題点とを浮き彫りにしているといえる。
 財産権に関してみても、日本の経済成長を支えてきた「土地神話」が崩壊して久しく、むしろ特に人口減少地域では、その価値の下落にともない「負動産」問題が生じている。土地についても競争の「敗者」が鮮明となってきているわけで、所有者不明土地の問題もこのような傾向によって深刻化しているといえよう。土地の財産権としての意義について、見直しが求められる時期に来ていると思われる。自衛隊や米軍基地周辺の土地取引を監視する重要土地規制法についても、その合憲性をどう考えるかが問題となる。より大きな視点では、情報化が進展するなかで、土地所有権を代表とする古典的な財産権と知的財産権との関係をどう理解しなおすかも、憲法上の問題となりうるだろう。

春季研究集会
テーマ:「経済システム・経済的自由と憲法————具体的課題

日時:2022年5月14日(土) 9:30〜17:00
会場:

【対面会場】明治大学駿河台キャンパス リバティータワー 9階 1093
【オンライン】Zoom(参加方法の詳細は会員宛にメールにて告知)

報告者・報告タイトル(仮題)

・山本真敬会員(新潟大学)「職業の自由の規制の現代的問題」
・遠藤美奈会員(早稲田大学)「生存権の射程」
・平良小百合会員(京都女子大学)「土地所有者の責務」
・大日方信春会員(熊本大学)「現代的財産権と憲法理論」

司会:大河内美紀会員(名古屋大学)、山田哲史会員(岡山大学)
企画実行委員:佐々木弘通会員(東北大学、委員長)、
       大河内美紀会員(名古屋大学)、村山健太郎会員(学習院大学)、
       山田哲史会員(岡山大学)

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